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「人間らしさを取り戻す」4つのポイント~認知症の介護で注目の「ユマニチュード」

2017.04.04

ヘルスプレス 2017.04.04

http://healthpress.jp/2017/04/post-2906.html

2025年、団塊の世代はすべて75歳以上になり、日本の高齢化社会はピークを迎える――。

4月3日付の朝日新聞の記事によると、2025年に向けて全国の入院ベッドを1割以上、実に15万床以上削減し、入院患者を在宅医療へ移行させる案が「地域医療構想」によって計画されているという。

自宅で高齢者を介護する機会は、これからますます増えていくことは間違いない。

自分の親や家族を介護するようになったとき、その相手との暖かい関係を維持したままでいられるかどうか? もし認知症が進んだら無理やり身体を押さえつけたり、意に添わないケアをしてしまうのではないか?

そんな不安を抱いてしまう人もいるだろう。そこで参考になりそうなのが、いま介護の世界で俄然注目されている「ユマニチュード」というケアの技法だ。

たとえば、介護施設で高齢の女性にシャワーを浴びせようとするときに、体をキレイにしようと思ってやっているのに、介護される側は何をされようとしているのか理解できず、激しく抵抗してしまう――。そんなことは珍しくない。

しかし、このユマニチュードという技法を使うことによって、女性は穏やかに介助者にお礼も述べながらシャワーを浴びるようになったりする。そのような効果のあるユマニチュードとは、どのような技法なのだろうか?

「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」

「ユマニチュード」とは「人間らしさを取り戻す」という意味の造語である。いまから35年ほど前、フランスで体育学の教師をしていたイヴ・ジネストさんが同僚のロゼット・マレスコッティさんと共に考案した。

認知症患者がケアを拒絶するのは、じっとしていることを求められ、生きている尊厳にかかわる「動く」ことを禁じられることから来ているのでないか――そのような仮説を元に考案された。

認知症ケアの現場を回ることでジネストさんが確立したユマニチュードの技法は、相手の動きを妨げず、尊厳を重んじることが特徴だ。具体的には「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」ということを基本としている。

恐怖感を与えやすいのはコレ

「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」。これらは一見当たり前のことのようだが、多忙な介護の現場では意外にないがしろにされていることが多い。そして、ただそれらをすればいいのではなく、そのやり方と姿勢にポイントがある。

たとえば、見つめる際にベッドや車いすにいる人を立ったまま見下ろすと、相手は威圧感を感じてしまう。自分もしゃがんで相手と同じ目線で話すことで、対等に接していることが相手にも伝わる。

また「話しかける」ときは声のトーンも大事だが、それ以上に「用件を伝える」だけにしないこと。「オムツを変えにきたよ」と用事だけを伝えると、自分の目的だけを優先しているように思えてしまうが、挨拶や天気の話題から入るようにすれば相手との絆を感じることができる。

「触れる」のは大事だが、顔や手は敏感な場所なので、いきなり触るとビックリしてしまう。特に<手をつかんでひっぱる>行為は恐怖感を与えやすい。腕や背中など抵抗の少ない場所を、広く、優しく、ゆっくりと触ることで、安心感を与えられる。

そして「寝たきりにさせない」で「立つ」ことはもちろん身体の機能や健康を維持する上で欠かせない。と同時に、人間としての尊厳を保つことに必要でもあるのだ。

普通のお年寄りと接するときにも適応できる

ユマニチュードの技法にはほかにもさまざまなポイントがあり、それは人間の知覚・感情・言語すべてに関わる包括的なコミュニケーションの仕組みでもある。

そして、そのエッセンスは認知症患者だけではなく、普通のお年寄りと接するときにも十分適応できるものだ。

ユマニチュードは、国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子氏によって日本にも紹介され、『ユマニチュード入門』(医学書院)、『「ユマニチュード」という革命』(誠光堂新光社)といった書籍も刊行されている。

高齢者がさらに増えていく社会において、ユマニチュードの注目度はますます高まっていくだろう。
(文=編集部)