介護ロボットの活用表彰で最優秀に輝いたアシストスーツ活用法
2017.03.07
日刊工業新聞 2017年3月3日
テクノエイド協会(東京都新宿区、大橋謙策理事長)と厚生労働省は、介護分野でロボットを有効活用した施設や、現場で活躍し成果を上げたロボットなどの事例を表彰する「介護ロボット導入好事例表彰事業」の第1回表彰式を都内でこのほど開いた。優秀賞に選ばれた8企業・団体がプレゼンテーションし、最優秀賞に野の花会(鹿児島県南さつま市)が選ばれた。
同事業はロボット技術を活用して介護の課題解決や質の向上を促すことが目的。ロボットや活用法など、ユーザー事業者、行政、ロボットメーカー、流通・普及部門と幅広い分野を対象に事例を受け付け表彰する。初となる今回は、95件の応募があった。
最優秀賞となった野の花会は介護老人福祉施設の運営を行う。サイバーダインのアシストスーツ「HAL(ハル)」を導入して要介助者の自立支援と介護員の負担低減を果たした実績が認められた。現在、ハルを5台導入し、要介助者の持ち上げをできる限り減らした介護を実現している。
同会の楠元寛之氏によるとハルを導入し2年あまりで、当初は介護員が「ハルの装着が面倒で着けずに作業する」など運用で苦労した。ハルは電池式で稼働時間が限られる。そこで、機能をフル活用するために「装着する時間帯を決めてしまうなど作業面の工夫を重ねた」という。
ロボット導入はユーザーがロボットの機能と限界を理解し、時にはロボットに合わせてあげることも求められる。それにはロボットメーカーと現場の橋渡し役が欠かせない。テクノエイド協会の大橋理事長は「介護現場の課題解決にはロボットの導入が不可欠」としつつ「コーディネーターの不足が導入への課題だ」と指摘する。
優秀賞には、パナソニックエイジフリーの移動できるベッド「リショーネ プラス」やクラリオンの服薬支援ロボ「KR―1000A」などが選ばれた。テクノエイド協会によると同事業は毎年継続して開催する方針だという。
この記事のファシリテーター 石橋 弘彰
アシストスーツや車いすになるベッドなど、ロボット技術が介護分野に浸透しつつある。だが、いまの業務にそのまま溶け込むようなものではなく、ある程度人の方がロボットに合わせてあげる必要がある。ロボットはなぜか「何でもできる」と思われがち。そうでないことを、エンドユーザーも理解してロボットを受け入れることが重要だ。