人生をより前向きに エンディングノート 50代から始めよう
2017.08.16
東京新聞 2017年8月16日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201708/CK2017081602000182.html
人生の終末に向けて準備する「終活」で、比較的簡単に取り組めるのがエンディングノートを作ること。葬儀や遺産の処分といった死後の希望を書き残すものととらえられがちだが、やり残した夢、介護や病気への備えなどを、早ければ50代から記すと、余生をより良く生きられるという。そんな意味から「ライフ&エンディングノート」と呼び直すべきだと指摘する専門家もいる。 (白鳥龍也)
「ライフ&エンディングノートの場合、五十歳を過ぎたら書き始めていい」
過去二十年余に介護や年金、相続に関する高齢者向けセミナーを千回以上こなしてきた明治安田生命シニアFPコンサルタントの山本英生さん(57)は言う。日本人の平均寿命は延びているが、五十代から次第に死亡率が高まる。「もしもを考えるなら早くない。書ける所から書き、気持ちが変わったらどんどん訂正する形で付き合って」と話す。
山本さんの考案するノートは、楽しかった、好きだったことなど人生の振り返りに始まり「六十二歳までに新婚旅行で行ったハワイを夫婦で再訪」など、これからやりたいことを書く。
終末期医療の専門家大津秀一医師(41)の「死ぬときに後悔すること25」(致知出版社、新潮文庫)によると、末期がん患者らが人生を振り返り、後悔することは「やりたいことをやらなかった」「夢をかなえられなかった」「行きたい場所に旅行しなかった」などだという。
こうした後悔をなくすのも終活の重要なテーマ。夢を記せば張り合いが生まれる。「家族で旅行」といった大勢がかかわる夢も、早めに準備できることで実現に近づく。
介護状態、重い病気になった時の対応も記しておきたい。どこで誰に介護を受け費用はどう賄うか、病名や余命の告知と延命治療に対する考え、判断能力がなくなった際の財産管理を誰に託すかなどを記す。平均寿命と健康寿命(制限なく日常生活が送れる年齢)の差が男女とも十年前後に達している今、ますます必要な事項だ。
相続も早めに準備を進めたい。貯蓄や株式、年金、生命保険などの現況を記すのは当然だが、相続税対象の遺産に含まれる現金や貴金属、骨董(こっとう)の確認も。
意外に重要なのが不動産名義の確認だ。土地が亡くなった父母や祖父母名義のままだと、変更には父母、祖父母の兄弟姉妹、その子らの放棄の書類が要るため膨大な労力がかかるからだ。
ライフ&エンディングノートは遺言とは異なり、法的拘束力はない。だが自分の思いを整理するため、財産配分の考え方を書くのも一案だ。
デジタル時代。個人情報満載のパソコンの処分や会員制交流サイト(SNS)の閉鎖方法も明らかにしておく。パスワードはメモして貸金庫に預ければ安心。万一の連絡先は人数が増えると残される家族の負担が大きい。連絡網方式で親戚や友人関係の中から代表者を絞って記す方がいい。
東京都内で開かれた山本さんのセミナーに参加した目黒区の元商社勤務の夫(79)と妻(76)は「いずれは作成をと思っていたが、良いきっかけになった。教育費援助など、孫たちのためにできることはないかも考えたい」と話していた。
山本さんが考案したライフ&エンディングノートの希望者は、明治安田生命=フリーダイヤル(0120)662332=の「その他の問い合わせ」へ。